贈与税を払ってまで暦年贈与を行うべきか

現行法令(2021年11月現在)では、200万円までの贈与にかかる贈与税が10%です。

非課税で贈与できる110万円と合わせると、年間310万円までは10%で贈与が可能です。

 

あえて10%を払って贈与を行う方が得になる・・と聞いたら不思議な感覚を持たれる方もおられるのではないでしょうか。

今回は、そんな暦年贈与の疑問点について、分かり易くご紹介できればと思います。

 

相続税より安いかどうかが第一ポイント

10%の税金を払ってまで贈与を行う人がいるのは、相続税よりも安いと考えるからです。

但し、相続税率は、財産の量によって変わる仕組みなので、贈与税を払うと損になることもあります。

 

判断ポイントは、確実に10%以上の相続税が発生する資産状況であることです。

相続税と贈与税額が同じだった場合でも、「先に受け取れる(渡せる)効果」がありますよね。

 

相続発生前に収めた贈与税は、将来の相続税から差し引くことができますので、「同じ税率なら先に貰っておく」という考え方ができるのです。

また、相続税率が確実に15%を超える人達にとっては贈与税を払ってでも渡しておくのが得ということになります。

 

相続税率は最高で55%まで設定されていますから、10%で済むのなら先に払います!という人達が大勢いるのです。

 

3年間の繰り戻しがある

110万円の非課税枠を超える贈与には、1つ大きな注意点があります。

それは、3年間は相続財産として繰り戻されて計算しなくてはならないという規定があることです。

但し、孫への贈与については、この繰り戻し規定が適用されません。

 

配偶者や子供に対して贈与を行った場合は、死亡直近の3年間に渡した資産を繰り戻す(相続税計算時に算入する)必要があります。

ですから、お金は渡し終えていても、3年間は相続税が減る効果は無い・・・という仕組みになっています。

 

この為、多くの人たちは、孫に対して暦年贈与を行います。

贈与した瞬間に相続税が削減できるので、とても有効な相続対策になるわけですね。

 

お金は返さなくてはいけないの?

3年間の繰り戻し制度は、既に贈与したお金を戻さなくてはいけないわけではありません。

あくまでも、相続税を計算するときに財産として扱いなさいという加算ルールです。

ですから、贈与から3年以内に相続が発生したとしても、お金を返す必要はありません。

 

まとめ

贈与税を払っても暦年贈与をした方が良いのは、将来の相続税率が高い人達です。

また、相続税が10%の場合でも、先に受け渡しができる効果にメリットを感じれば実行しておく価値があります。

注意が必要なのは、相続税が発生しないご家庭の場合です。

そもそも相続税が発生しないのなら、相続時に非課税で資産を受け取ればいいので、贈与税を払う意味がありません。

このようにシンプルに考えて判断されると良いと思います。

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